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サステナビリティ

LEGO Mindstorms EV3で組み立てたロボットを動かします。高校生インターンシップは、かなりエキサイティングな3日間でした。

仁川学院高等学校(兵庫県西宮市)では2019年度から、新たなコースとして「カルティベーション(Cultivation)コース」を設け、大学や企業と連携した取組みの実施を始めています。

「カルティベーション」とは“耕すこと、育てること”を意味し、そのコースの中では企業との連携による体験学習や、ボランティア活動など、様々な体験プログラムに参加し、社会の中での自分をみつめ、総合的な人間力を高めていく取り組みが行われます。これを通して、与えられた課題に対して仲間同士で目標を共有し、解決に向けて力を合わせて取り組む力を養うというものです。

この一環により、アルトナーはインターンシップ(就業体験学習)の受け入れ協力依頼を正式に受け、7月29日(月)から31日(水)までの3日間、「LEGO Mindstorms EV3(レゴ マインドストーム EV3)を使ってモノづくりを体験しよう」を開講しました。会場は、日頃からアルトナーのエンジニアの研修や教育に使われている大阪の江坂にあるアルトナーの教育・研究施設「ラーニングセンター」です。
(取材・記事執筆:アルトナー取材班)

カリキュラム

7月29日(月) 30日(火) 31日(水)
・開講式
・課題説明
・基本操作説明
・課題実施
・課題実施 ・課題実施
・走行会
・報告資料作成
・報告会
・終講式

インターンシップの初日は、開講挨拶からはじまり、アルトナーの講師紹介、参加者の自己紹介、全体のガイダンスまでの開講式から始まります。これから3日間に渡って、一緒に課題に取り組んでいく講師や仲間達への自己紹介も含む顔合わせ。社会に出てからもとても大切な「まずは、元気に明るく挨拶すること。」の意味を学ぶ場面でもあります。生徒たちは、いつもと違う企業での体験なので、少しだけ緊張しています。

インターンシップのカリキュラムは、
これから重要視される「複合系」の内容。

アルトナーでは、日頃から大学生向けのインターンシップが実施されています。主に、機械系、電気・電子系、情報系の3つがメインなのですが、昨今のエンジニアには、より一層の“総合力”が求められていることから、「複合系」として新たに用意されているプログラムがあります。実は、今回のインターンシップの内容が、それと同じ「LEGO Mindstorms EV3を使ってモノづくりを体験しよう」なのです。

このプログラムを取り入れた、アルトナー研修担当の安井マネージャーは、チームの中で、自分の役割を考えながら物事を進めていくことを重要視しています。「一人で勝手に進めても、ただ誰かに追随するだけでも上手くいかない。皆で一緒になって、考えながら進めて行けば良い結果が出せるということです。」また、上手くいっても、いかなくても、その原因を一つ一つ明らかにしながらトライ&エラーを重ねるトレーニングになるということと、将来の職業選択の一助になればとの考えが、そこにはあります。

モノづくりは様々な技術が融合し実現されているということ。そこでは、仲間とのコミュニケーション、チームでの課題への取り組みや、解決方法の模索などが重要視されている点などにおいて、仁川学院高等学校の「カルティベーションコース」の意図するところとも合致しています。

レゴマインドストームEV3とは何か?

初日の29日、生徒たちはインターンシップの全体を把握して、早速、アルトナー研修担当の田中リーダーから、マインドストームの仕組み、操作説明、ハードウェアの説明、ソフトウェアの説明、基本的な動作の説明を受け、しっかり学んでいきます。

レゴ社とMIT-マサチューセッツ工科大学で、共同開発されたマインドストームは、プログラミングが可能なインテリジェントブロックを中心に、モーターなどの可動するブロックや、様々なセンサーのブロック、それにギヤや車軸などを自由に組合せてロボットや機械を作ることが出来るロボティクス製品。

第3世代のマインドストーム(EV3)では、セグウェイのようにジャイロセンサーを使って、倒立振り子式のロボットが組み立てられるようになったり、BluetoothやWi-Fiなどの通信機能も標準で組み込まれるなど、その先進性には目を見張るものがあります。

一見すると、難易度の高そうな「設計課題」。
これをクリアできるロボットを組み立て、プログラミングします。

ロボットが、走行するマップには黒いラインが引かれています。これを検出しながら走行し、途中の障害物を検知し避けた上で、元のコースに復帰し走行を続けます。最後に、円柱を押して描かれた的の中心で止め、音を鳴らして終了を知らせるというのが、「設計課題」です。

マインドストームで作る、この課題をクリアするためのロボットは、頭脳にあたるプログラミングが可能な「インテリジェントブロック」に、物体までの距離を測定できる「超音波センサー」、色や光の強さを検出できる「カラーセンサー」、左右のタイヤをそれぞれ制御し走行させるための「Lモーター」2つを接続し、ブロックのように組み立てたものが基本的な構造になります。

今回参加している生徒の一人は、小さい頃からレゴが好きで、それをプログラミングできるということで、飛び入りで参加したというほど、特別な魅力がマインドストームにはあるようです。同じように、全員が、真剣に組み上げたロボットと向き合い、課題にトライしていきます。

意外にも、調整に緻密さが要求されるプログラミング。


インテリジェントブロックにダウンロードするプログラムは、パソコン上で、動作やフローのブロックを視覚的に繋げていくスタイルなので、コードを書いていく一般的なプログラミング言語よりも理解しやすいのですが、そのパラメーターの設定は意外にも緻密なので、生徒たちは、仲間とコミュニケーションをとりながら、トライ&エラーを繰り返していきます。

例えば、左右のタイヤを動かす「Lモーター」には、ハンドルを切るような動作のステアリングモードと、左右のタイヤを逆回転させて向きを変えるタンクモードがあり、それぞれ細かく制御しなければならなかったり、センサーが検知した値の、どこをトリガーにして、どれぐらい反応させるかなどです。
2日目の30日は、最終日の走行会に備え、1日かけてロボットがちゃんと動くように調整していきます。

安井マネージャーはもちろんですが、実は各チームにはアルトナーの新入社員もアドバイザーとして一人づつ付いているので、わからないことを聞いてくる生徒がいれば、きちんと教えてサポートしてあげられるようになっています。新入社員とはいえ、彼らはこのマインドストームを使ったグループワークも経験したこともある、現役のソフトウエアエンジニアたちなので、貴重なアドバイスがもらえそうです。

ロボットやプログラムが完成した最終日。
「走行会」に挑み、その出来栄えを競い考察します。

3日目の最終日31日は、午前中にロボットやプログラムの最終調整をし、午後からは走行会を行います。タイムトライアルと精度に加減点しチームごとの結果を競います。安井マネージャーから見ても、今回のインターンシップのカリキュラムは、高校1〜2年生向けとしては、割と難易度が高かったものの結果は概ね良好。どちらかというと技術系に興味のある生徒たちだけに、取り組む感触も、勘も申し分なかったようです。

各チームがまとめた「結果報告」から見えてくる、
このインターンシップで生徒たちが学んだこと。

マインドストームでロボットを組み立てて、課題をクリア出来るように動作させるためには、想像していたより緻密な調整が必要です。生徒たちは、あきらめずに何回ものトライ&エラーを繰り返さなければいけない、根気の必要な作業だということがよく分かったようです。それだけに、上手く動作してくれた時、課題をクリアしたときの達成感や充実感を、より強く感じることが出来るのです。また、結果の善し悪しの大切さの一方で、それら途中のプロセスの大切さも感じ取っています。

生徒たちへの設計のヒント


●目標と手順を明確にして取り掛かる
●意見出しや作業分担等、グループの特性を活かそう
●最初はうまくいかなくて当然。何故そうなったかを分析しよう
●時間が経つと人は忘れる。しっかりとメモを取って残そう

生徒たちは、チームで一つの課題に取り組むということに関しては、知識や問題点を共有することが出来るので、作業を効率的に進められれること。何より、安心感や達成感も共有出来るということも学びました。

将来の進路、職業を選択する際に活かせそうだという感想もあった「LEGO Mindstorms EV3を使ってモノづくりを体験しよう」は、わずか3日間ながら、生徒たちにとっては密度が高く、沢山の収穫をもたらしてくれたようです。

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