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テクノロジー

世界初の燃料電池自動車の開発責任者である藤本幸人氏を講師に招き、「能力開発セミナー」(7月21日)が開催されました。

セミナーレポート『2018年度 第2回 能力開発セミナー』を開催

アルトナーでは、次代のエンジニアを目指す学生と社員を対象に、7月21日(土)、講師に人工知能・機械学習の研究者である濱上知樹氏と、世界初の燃料電池自動車の開発責任者である藤本幸人氏を招いて「能力開発セミナー」を開催しました。本会場である東京と、大阪、名古屋、宇都宮の各会場をWeb中継でつなぎ、総勢300名を超える学生と社員が聴講。それぞれの講演後には活発な質疑応答も行われ、有意義な時間となりました。

仕事の流儀「未来を切り開く夢への挑戦」

続いて講演していただいたのは、長きにわたって本田技術研究所で燃料電池自動車の開発リーダーを務められた藤本幸人氏。世界初、世界一となった夢の燃料電池自動車への挑戦を通して、開発の現場で会得されたエンジニアとしての考え方や、リーダーとしての哲学。確固たる技術論の上に培われた高い志は、これからのモノづくりを担うエンジニアにエールを送る力強いメッセージとなりました。


講師:株式会社本田技術研究所 上席研究員 藤本幸人氏
プロフィール
工学院大学工学部卒業後、本田技研工業株式会社に入社。エンジン制御システムの研究開発等に従事後、1998年 燃料電池車の開発責任者に着任。2002年 世界で初めて水素燃料電池自動車 (FCX)を実用化。2008年 燃料電池自動車 FCX CLARITYの量産化を実現。フィットEVにも開発責任者として携わる。朝日新聞の特集記事GLOBEに掲載や、NHKのテレビ番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」出演等、幅広く活躍。

エンジニアとして燃料電池自動車で
新しい時代を切り拓きたかった。

「私はホンダの技術者として37年勤めてきて、その半分以上を燃料電池の研究開発に注いできました。入社当初からガソリンエンジンの制御システムに携わっていましたが、1998年41歳の時に燃料電池自動車の開発チームに開発責任者として抜擢されました。今起こっている気候変動や異常気象は、ひとつには自動車が排出する排気ガスやCO2が地球に負担をかけて招いてしまった側面があります。科学技術が生んだ問題は、科学技術で解決しなければならない。

そんな想いから、水素燃料電池自動車 (FCX)、さらには量産車であるFCXクラリティの開発がスタートしました。排気ガスを出さず、水しか排出しない、ガソリンを使わない未来の車。私にはエンジニアとして燃料電池自動車で新しい時代を切り拓いていきたいという想いがありましたし、燃料電池にはその力があると確信していました。」

ホンダの創業者である本田宗一郎が掲げた社是に「地球規模で考え、行動は足元から」という言葉があります。藤本氏は、エンジニアとして遠くを見つめてどこに向かっていくのかを考え、今日の一歩一歩をしっかり進めていくことが大切だと強調します。

プロジェクト推進のための「逆算のゴール」を設定。
その実現には敢えて「難しい道」を選ぶ。

「燃料電池自動車は世界の大手メーカーが火花を散らす開発競争で、ホンダもトップ集団の一角を占めていました。技術開発は常に競争で、競争が技術を進化させます。誰が最初に、まだ世の中にないものを実現するか、これが重要です。しかし、世界初のことをやろうとすれば、いきなり成功するはずがありません。失敗の連続です。そこで、私は逆算のゴールを設定してプロジェクトを推進させました。

まず、最終的にいつ、何を成し遂げていたいかを決めます。その実現のためには、いつまでに何をしておく必要があるか、そのためには今日何をすべきかを明快にしてチーム全員が同じ方向を向いて取り組んでいきました。世界初を競っているので、他社よりも1日でも早く開発したい。しかし、近道を行くのではなく、難しい道を選んだ方が必ず成功します。」

難しい道とは何か。藤本氏は開発段階でのエピソードを紹介しながら、あくなきこだわりの大切さを語ります。

「完成車に近づいたテストドライブの時のことでした。アクセルを強く踏み込んだ時、アクセルの一瞬の緩みを感じたのです。ほんのわずかな緩みですが、見逃すことはできません。満足したら技術は死にます。技術は常に、さらに先へ、進化し続けなければなりません。その真実は、机の上だけでは見逃してしまいます。近年、効率を求めてバーチャルな世界が重要視されていますが、最後は現場、現物、現実。皆さんには、このことを肝に命じておいてほしいと思います。」

世の中を動かすために必要なこと。
「そこに感動はあるか、エモーションはあるか」。

世界にまだないものを実現するためには、とてつもない個人の突き抜けた想いが必要だと藤本氏は語ります。藤本氏が講演を通して何度も口にしたのが「夢」という言葉です。

「ホンダは、夢がベースにある会社です。企業スローガンである“The Power of Dreams”は、私たちのモノづくりの礎です。人に感動を与える車、人に感動を与える技術、それが世界を変えていきます。世の中を動かしていくには、そこに感動が必要です。世界初というスピードと、世界一というクオリティの高さを目指すのはホンダのDNAであり、その両方を目指しています。私は無類の負けず嫌いで、勝ちたいという気持ちが私の源泉。皆さんもエキスパートとして果敢に挑戦して、未来を進化させてほしい。それからもうひとつ、自分たちが生み出していくものに人の心を動かすエモーションが備わっているか、これも非常に重要な要素です。」

藤本氏はさらに、エンジニアとしてのキャリアの先にあるリーダーについても言及します。

「一台の車は数万点の部品から構成され、開発には1000人を超えるメンバーが関わっています。それを率いる開発責任者は重責です。チームメンバーが自由に意見を闘わせることのできる場をつくり、全員の夢を共有してチームとしての目標を提示し、最後は決断しなければなりません。岐路に立った時、チームメンバーのそれまでの努力と汗と涙を背負って、ベストな決断ができるか否かが問われます。」

ドイツのアウトバーンでFCXの完成車に試乗した時、4年にわたる燃料電池自動車プロジェクトが正しかったと確信したという藤本氏。「想いは意地でもカタチにせよ。結果はチームのため、過程は自分自身のためにある」というメッセージで講演を締めくくりました。

今後もアルトナーでは、力強く羽ばたこうとする若いエンジニアに向けて、次代の鍵を握るテクノロジーに携わる方やトップエンジニアの方による、能力開発セミナーを実施してまいります。

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