エンジニアの夢と成長と自己実現を支えると同時に、
60年以上の歴史で築いた顧客企業からの信頼に確実に応え、さらなる企業価値の向上を目指します。
事業を取り巻く環境と2024年1月期の業績
2024年1月期は、本格的なポストコロナ時代への突入を背景に、当社の主要顧客である自動車関連メーカーや半導体製造装置関連メーカーも正常な活動を再開したことを実感する1年でした。当社への技術者の要請は極めて旺盛であり、おかげさまで当社は10期連続で増収・増益を達成しました。今後も様々な業種で開発意欲は高まり、エンジニアの要請も前年度を上回ると予想されます。これに伴い、当社の事業成績も堅調に推移していくと考えています。
2024年1月期で特に目を引くのは、営業利益率の向上に最も大きく影響する技術者単価の上昇です。2024年1月期には、技術者単価が前期比で3.2%上昇し、これに伴って営業利益率も前期の12.9%から15.1%に上昇しました。
技術者単価上昇の要因の1つは、当社が技術者派遣ニーズの高いプロジェクトに人財を供給している点にあります。近年、「カーボンニュートラル」関連プロジェクトからの要請が他の業種よりも非常に多くなっています。当社はそこに付加価値の高い技術者を供給することで、市場平均よりも高い契約単価を獲得しています。特に2024年1月期は新卒エンジニアの初配属単価が例年になく上昇しました。
また、技術者単価の上昇を支えるもう1つの鍵は、現在、顧客企業と契約中の既存エンジニアがプロジェクト先において活躍し、成果を上げることです。当社は充実したカリキュラムと独自の教育システムの導入により、エンジニア一人一人のスキルアップ体制を構築しています。さらなる研修体制の強化やキャリアサポートを実施してエンジニアの活躍を支え、顧客満足に貢献していきたいと考えています。
激化する厳しい競争環境下で優秀な人財を持続的に確保し、育成していくためには、人財活用チャネルの拡大が重要です。当社は中期経営計画(2023年1月期~2025年1月期)において、多様な働き方を受け入れる請負・受託事業の比率を10%まで上げることを目標に掲げました。お客様の要請は高く、当社の請負・受託事業比率は前年の8.6%から9.3%に上昇し、中計最終年度には目標の10%を達成できると見込んでいます。
「カーボンニュートラル」の取り組みの進捗
当社は中期経営計画において、「カーボンニュートラル」を事業活動の柱として位置づけています。「カーボンニュートラル」に関連する技術開発プロジェクトに当社のエンジニアが参画することで、開発の進展や市場での普及を支えていきます。これが当社の「カーボンニュートラル」への貢献のあり方です。ESGへの取り組みは、お客様、働く方々から問われる時代となっております。
この「カーボンニュートラル」への貢献に向けて、当社は2つの数値目標を設定しています。1つは新卒・キャリア採用における「カーボンニュートラル」採用対象の構成比であり、もう1つは配属中のエンジニアにおける「カーボンニュートラル」プロジェクトの技術者の構成比です。新卒採用については、2025年1月期の目標55.0%に対し、2024年1月期時点で46.1%まで確保できています。引き続き目標の55.0%の達成に向けて採用を強化していきます。配属中のエンジニアに関しても、2025年1月期の目標50.0%に対して、2024年1月期の時点で48.3%と、もう一歩というところまで進捗しています。「カーボンニュートラル」関連プロジェクトの高いニーズに応え、着実に人財を供給できれば、中計最終年度の2025年1月期には目標を十分に達成できると考えています。
今後の成長戦略
お客様は昨年度以上に開発スピードを上げており、エンジニアの要請が非常に増加しています。中計最終年度である今年度の業績は、その要請に当社の人財供給がどこまで応えられるかにかかっているといえます。
近年、人手不足が大きな社会課題となっていますが、エンジニア不足も例外ではありません。競争が激化する採用市場環境において、いかに当社が計画に見合った人数を確保できるかが、極めて重要なポイントとなります。
エンジニアの夢と自己実現をサポートすることを経営の根底に置く当社は、採用活動においてプロジェクトテーマや配属先となる企業を全面的に訴求しており、そこに共感した方が当社に入社する傾向にあります。入口である採用と出口である配属の一体感を持った採用活動の展開により、この厳しい採用市場環境においても、新卒技術者は前年度より約40名増の171名が2024年4月に入社しました。キャリア採用においても、目標の100名を必達し、お客様の要請に対応していく所存です。
また今後の成長に向けて、当社は3つの方針を掲げています。1つ目は現在の市場環境、いわゆる需給バランスを勘案して、積極的な技術者の単価交渉を行い、前年度以上の技術者単価の上昇を目指していくこと。2つ目は人的資本であるエンジニアに対してさらなる教育・研修を実施し、エンジニアの付加価値をさらに高めること。それが顧客満足につながり、結果として技術者単価の上昇につながっていくと考えています。そして3つ目は、当社の主要顧客である自動車関連メーカーや半導体製造装置関連メーカーからのニーズに的確に応えていくことです。
加えて、この2年間の歩みを振り返りますと、中期経営計画の基本施策の1つ目の「セグメント戦略の推進」を広げて掘り下げ、同業他社との比較の中で、アルトナーの強みと弱みを細分化し、強化・補完することで、市場優位性を高めていくことができると考えています。
人財の確保のため継続的な待遇の改善・向上を実現できる経営環境を構築
当社にとって重要な課題は、人財の質と量の確保です。お客様の質と量の要求に応えられなければ、他社の参入を許すことにもつながりかねません。人財の質と量を確保することは、当社の総合力で対応していく課題と考えています。
人財の質については、今まで以上に魅力ある業務を確保してエンジニアに働く場を提供し、適切な教育訓練とフォローアップ体制を充実させていきます。また、一時的ではなく継続的な待遇の改善・向上を実現できる経営環境を構築する必要があります。そのためにも当社の付加価値の向上を目指していきます。
人財の量については、現在の事業領域では、約200~250名の新卒採用と100~150名のキャリア採用が可能だと見込んでいます。しかしそれ以上の人財確保が必要な場合は、M&A施策による絶対数の確保や外国人採用戦略の検討が必要です。
今後、請負・受託比率の向上のため、外部の人財活用、協力会社の組織化の強化が重要となると思います。現在の領域においては、プロパーのさらなる確保と、外国人や協力会社の人財の確保によって、量の課題は解決可能であると考えています。
アルトナーの強みと優位性
当社は1962年、昭和37年にこの事業をスタートさせました。同業上場会社を見渡しても、当社以上の歴史を持つ会社はありません。当社が技術者派遣事業のパイオニアであると言っても過言ではないと思います。60年以上、この業界で確固たる地位を築いてきたのは、これまで積み上げてきた顧客企業との信頼と実績があるからです。これは揺るぎない事実であり、当社の価値だと考えています。当社は上・中流工程という高いレベルを必要とする技術領域へのプロジェクト参画率が同業他社に比べて高い会社です。これは当社の優位性であり、今後も維持していくべき部分です。特に、当社の主要顧客である自動車関連や半導体製造装置関連のお客様からは、「質の高いエンジニアを要請するとしたらアルトナー」というブランドイメージを持っていただいており、今後も守っていくべき価値だと考えます。このイメージは、継続的かつ安定的に人財を供給できる当社の強みに基づいており、この期待に応え続けることが当社の使命だと考えています。
人的資本に対する考え方と取り組み
当社の人的資本に対する基本的な考え方は、「エンジニアサポートカンパニー 私達は技術者の夢をサポートします」という当社の経営理念に則っています。次にパーパスにある「日本が世界に誇る財産であるエンジニアの成長、自己実現をサポートする」という基本理念をベースに、エンジニアの成長や夢をサポートするための施策を常に検討し、経営を推進しています。
当社の人的資本の取り組みの要は教育です。そして、人としての成長とエンジニアとしての成長の両面をサポートすることを教育の理念とし、当社独自の教育システム「T字型スペシャリスト教育システム」など、様々な教育訓練のカリキュラムを用意し、エンジニアを支援しています。
また、女性活躍の推進は、中期経営計画でも掲げた重要な施策の一つです。当社は、結婚や子育てなどで一時的にエンジニアという職を離れた方が、再びエンジニアとして社会復帰したいと考えた時に活躍できる労働環境やサポート体制の整備に取り組んでいます。さらに男女を問わず育休を自由に取得できる企業風土の醸成や実績づくりも継続的に行っていきます。
人財の定着については、当社では消極的離職と建設的離職とを区別して考えています。エンジニアがアルトナーでの成長を経て卒業し、次のステージに挑戦することを建設的離職と捉え、「転職支援制度」で支援しています。一方、アルトナーを卒業してセカンドステージに進んだ後に、再びアルトナーに戻りたいと考える方に向けた「ジョブ・リターン制度」を設けています。
これらの取り組みは、当社の経営理念とパーパスに基づいています。当社では経営理念とパーパスが真に当社の“根っこ”にあり、これがあるからこそ、様々な施策を柔軟に展開することが可能です。その結果、当社を離れるエンジニアに対して「せっかく育てたのになぜ辞めるのか」という
発想ではなく、次のステージで活躍するエンジニアを笑顔で送り出せるのだと思います。これが最終的には従業員満足につながり、当社の卒業生が様々なメーカーで活躍し、アルトナーの後輩を活用するという循環になればと考えています。

人権尊重への取り組み
当社は人財ビジネスを営む企業です。人を大切にするというポリシーが根底になければ、人は「モノ」に変わってしまいます。今後もこのビジネスを展開していく以上は、当社が「人財」と呼ぶすべての社員に対する様々な配慮が不可欠であることを基に、事業を推進していきたいと考えています。その意志を明確にするため、2024年1月に当社は国連グローバル・コンパクトへの支持を表明しました。
また、当社の人権の考え方を社員に浸透させ、人権意識を高めるために、継続的に全社員向けの研修を実施しています。昨年は人権、一昨年はLGBTQ+をテーマに研修を行いました。
今後、協力会社との組織化を検討する際にも、当社と同じ人財ポリシーを持つ会社かどうかは、非常に重要なポイントとなります。特に当社の「エンジニアサポートカンパニー」という経営理念とパーパスへの共感と共有が不可欠です。当社の経営理念とパーパスに共感し、それを共有できれば、協力会社のエンジニアを「共有の財産」として当社が教育するなど、提携・連携の幅を広げられる可能性もあると考えています。
令和6年能登半島地震への義援金について
令和6年に発生した能登半島地震により被災・避難された皆様に心よりお見舞い申し上げます。当社は令和6年能登半島地震の被災者支援の一環として、中央共同募金会を通じて寄付を行いました。北陸エリアは、当社が定期的に採用している大学等の教育機関があり、また昔から精密技術が地域産業として発展してきたエリアでもあります。当該地域には、当社のお客様を含め、日本を代表する様々な精密機械メーカーが存在しています。北陸エリアの復興は日本全体の利益につながると考えております。被災地域の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
ステークホルダーの皆様へ
当社が歩んできた60年の歴史の中には、オイルショックもありましたし、リーマンショックもありました。そしてコロナショックもありました。過去の経験や歴史から、社会の変化に対していかに迅速にビジネスを変化させていけるかが、企業が継続的、永続的に存在するために必要なことだと学びました。
今後、設立100年を目指すにあたり、お客様の変化や働く方々の志向の変化、市場環境の変化をいち早く捉え、絶対に変えてはいけない部分と、思い切って変えていく部分を判断し、柔軟に対応していくことがトップとしての私の役割だと思っています。これからもエンジニアを支え、高付加価値のエンジニア集団としてアルトナーの価値向上に取り組んでまいります。今後も変わらぬご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。