代表取締役社長 CEO メッセージ

外部環境や市況に左右されない経営基盤をさらに強固にし、
「高付加価値の技術者集団アルトナー」として、持続的な成長軌道を描いていきます。

代表取締役社長CEO 関口 相三

代表取締役社長CEO
関口 相三

11期連続の増収・増益を達成

2023年1月期にスタートした3か年の中期経営計画(前中計)が、2025年1月をもって終了しました。2025年1月期の売上高は目標の116億円には届かなかったものの、前期比10.0%増の111億円を記録し、営業利益率も技術者単価の上昇に伴い16.3%と目標を大きく上回りました。これにより、11期連続の増収・増益を成し遂げるとともに、ROEや配当性向においても当初の目標を大きくクリアする結果となり、株主の皆様への還元を着実に進めることができました。

前中期経営計画の振り返り

 前中計で当社が目指したものは「持続的成長および次世代成長のための基盤の構築」です。特に技術者派遣事業を主軸とし、「人」を核とする当社にとって、少子高齢化や労働人口の減少、「理系離れ」などによるエンジニア不足への対応は喫緊の課題です。いかに人財を確保し、事業リスクを最小化していくか。この課題に真正面から向き合い、土台づくりに取り組んだ3年間でした。

 特に注力したのが請負・受託事業の強化です。外国人財、シニア層、子育てからの復帰を希望する女性など多様な人財の活用や、外部協力会社のエンジニアとの連携により、当社所属のエンジニアに限らない稼働人員確保の体制構築を推進しました。その結果、請負・受託事業の売上構成比は目標の10%を上回る11.6%まで進捗し、成果に大きな手応えを感じています。

もう1つの柱が「高付加価値の技術者集団アルトナー」の確立です。「カーボンニュートラル」プロジェクトを中心とする上流工程を担うエンジニアの配属比率の向上によって、技術者単価と収益性の向上を目指しました。活発な市場環境の中で、2025年1月期は既存技術者の単価だけでなく、新卒・キャリア入社者の初配属単価も上昇し、営業利益率の向上に大きく寄与しました。また技術者の稼働率が高水準で推移し、新卒技術者の配属が計画より前倒しで進捗したことで、稼働人員も計画を上回りました。

エンジニアの「質」では目標を達成できた一方、課題を残したのが「量」の部分です。技術者数1,600人という野心的な目標を掲げましたが、採用人数が目標に届かなかったことで売上高の伸びに影響を与えました。近年の新卒採用市場で顕著になっている採用活動の早期化に、当社が十分に対応できなかったことが主な要因です。早期化する採用市場では、企業の知名度が大きく影響することを痛感しました。教授や学校との強固なネットワークを武器に採用活動を展開してきた当社ですが、この環境変化に対応する新たな採用戦略は、新中計に引き継ぐべき重要課題となりました。

新中期経営計画(’26年1月期〜’30年1月期)

前中計で構築した基盤をさらに強固なものへと進化させるため、新中期経営計画(’26年1月期〜’30年1月期)では基本施策を引き継ぎつつ、さらに高い目標を設定しました。これをしっかり達成していくため、2030年をターゲットとする5か年の時間軸で成長戦略を推進していきます。

自動車の電動化や半導体需要の拡大、DX推進などにより、産業横断的にかつてない高まりを見せる技術者ニーズを確実に捉えながら、人財確保といった課題を克服するため、以下の3本柱の基本施策を推進していきます。

①セグメント戦略の推進

ハイエンド領域※の配属比率を従来の36%から50%へ引き上げ、更なる高付加価値技術者集団としての地位確立を目指します。当社が定義する「ハイエンド領域」は、業界内では“超”ハイエンドに相当します。当社の3つの領域区分における「ハイバリューグループ」及び「ワイドバリューグループ」が、業界で一般的にいわれるハイエンド領域であり、当社は既にこの領域で80%の配属率を誇ります。新中計では、それをさらにセグメントした“超”ハイエンド領域、すなわちワイドバリューグループの最上位工程からハイバリューグループの領域における配属率を50%に引き上げます。この目標達成により他社との圧倒的な質の差別化が実現し、技術者単価の上昇や営業利益率の向上にも貢献すると確信しています。

ハイエンド領域を担う人財は、採用に加えて、請負・受託プロジェクトでハイエンド領域を担うエンジニアを育成し、技術者派遣事業に展開することで確保していきます。請負・受託事業の拡大の意図の1つは、ハイエンド人財を育成する機能を持たせることにあります。これにより、質の高い人財基盤の構築とエンジニア育成による企業全体の競争力向上を図ります。

②多種多様な人財活用の推進

稼働人数の確保に向けて、請負・受託事業の人員比率を30%まで拡大します。引き続きシニア層、女性、外国人労働者(留学生)など多様な人財の積極的な活用を進めるとともに、外部協力会社との連携の強化・組織化を推進し、自社エンジニアに限らない幅広い人財ネットワークを構築します。請負・受託事業の人員比率の拡大は、当社の成長基盤の肝となるものです。その強化に向けて、全社を挙げて取り組んでいきます。

③新たな事業・収益機会の模索

協力会社との連携・組織化に向けて、M&Aやアライアンスを積極的に推進し、既存事業の枠を超えた新たな収益機会の獲得と事業領域の拡大に取り組みます。これらの連携を通じて当社を「総合技術サービス会社」へと進化させます。人財確保は業界全体の共通課題です。ハイエンド領域の強化を得意分野とする当社が、配属や育成などの面で協力会社をサポートしながら、目まぐるしい技術変化の中で、それぞれの強み・弱みを補完し合い、共に成長していきたいと考えています。

以上の3本柱は、従来の取り組みをさらに深化させるとともに、環境変化に迅速に対応するための改革を具現化するものです。当社が今後も高付加価値の技術者集団として市場をリードし続けるための中核戦略となります。少子高齢化・労働人口減少に対するリスクヘッジに取り組みながら、高付加価値の技術者集団として同業他社との差別化を図り、持続的な成長軌道を描いていきます。

代表取締役社長CEO 関口 相三

キャッシュアロケーション/株主還元

当社は持続的な成長に向けて、安定したキャッシュ・フローの確保と効率的な資本配分に努めています。成長投資の一環として、請負・受託事業の拡大に連動するM&Aの推 進に加え、前中計からの課題であった新卒採用市場での人財確保に向け、採用の早期化に対応するため、大学入学時から「アルトナー」という名前は聞いたことがあるレベルの知名度の実現のため、外部宣伝活動の強化に積極的に投資していきます。

株主還元策としては、配当性向50%を基本としつつ、累進的な配当政策の継続により、12期連続の増配を目指し、安心銘柄としての評価を保持します。さらに、月間売上高の3か月分以上の手元キャッシュを確保する社内留保方針を堅持し、当社の財務基盤を強固にしていきます。

ESG経営を着実に推進/人的資本への投資

環境への取り組みを通じた当社の成長戦略は、ESG経営の根幹をなすものであり、株主や社会の皆様からの信頼獲得にも直結すると認識しています。引き続き計画の柱に「カーボンニュートラル」を据え、配属中の技術者における「カーボンニュートラル」プロジェクトの構成比50%以上、新卒・キャリア採用における「カーボンニュートラル」採用対象の構成比55%以上を目標に掲げ、強力に推進していきます。

また、当社にとって最大の経営資本は人財であり、その人財がお客様から高く評価されてこその当社です。エンジニアの教育に積極的に投資するとともに、健康経営の推進により全従業員が安心して業務に専念できる環境づくりに努めています。また労働組合との協議を重ね、2025年より当社の成長と連動して給与がベースアップする仕組みを導入し、継続的な待遇の改善・向上を実現できる経営環境に尽力しています。

ガバナンス面では、2025年5月より執行役員制度を導入し、経営の意思決定と業務執行の役割分担を明確化しました。これにより、迅速かつ透明な意思決定プロセスを確立し、経営の効率性と健全性の更なる向上を図ります。

リーマンショックの経験から築いてきた好不況に左右されない経営体制

トランプ政権による相互関税の発動や日銀の利上げなど、急激な市場環境の変化の中に私たちは置かれています。しかし、当社はある程度の外部環境変化による影響を受け る可能性はあるものの、収益が大幅に悪化する事態には至らないと見込んでいます。振り返れば、当社は2008年のリーマンショックを契機とする世界的な不況の中で、エンジニア派遣契約が相次いで打ち切られるという苦い経験をしました。「景気悪化が経営悪化につながるような経営体制から脱却する」。その強い決意の下、着々と推進してきたのが上流工程へのエンジニア配属比率の拡大です。中・下流工程の配属 が80%を占めていた事業モデルを変革し、お客様の中核業務に踏み込む戦略へと舵を切ることで、好不況に左右されない強固な基盤の構築に努め、現在は上・中流工程が80%、下流工程が20%となる体制を実現しています。

「継承者として立派に責任を果たしたい」 −−−
その思いが原動力

創立者一族の一員として先代からバトンを受け継いだ私は、1998年に副社長に就任して実質的に経営を任され、2002年に社長に就任しました。ビジネスモデルの大改革と会社の再生に踏み込み、様々な外部環境と課題に合わせて変化を繰り返しながら、技術者派遣業界のパイオニアとして信頼と実績を積み重ね、当社は約60年の歴史を刻むに至りました。「継承者として立派に責任を果たしたい」、その思いが原動力だったと思います。私の思いや価値観は、社長就任前から育み、就任と同時に発表した経営理念「エンジニアサポートカンパニー」にすべて込められています。エンジニアの成長と自己実現をサポートするのが、当社の存在意義です。エンジニアにとって現在の教育メニューは十分か、本当にエンジニアのニーズに応えられているのか。それらを常に問いながら、持続的成長に向けて尽力する所存です。今後とも、当社の挑戦にご期待いただくとともに、温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。

エンジニアにとって現在の教育メニューは十分か、本当にエンジニアのニーズに応えられているのか。それらを常に問いながら、持続的成長に向けて尽力する所存です。今後とも、当社の挑戦にご期待いただくとともに、温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。

※ハイエンド領域:ハイバリューグループ+ワイドバリューグループの一部の業務レベル(次期製品の先行開発、基幹技術の開発、新機能の開発、仕様書の作成、要求分析、機能設計等)

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