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テクノロジー

人工知能・機械学習の研究者である濱上知樹氏を講師に招き、「能力開発セミナー」(7月21日)が開催されました。

セミナーレポート『2018年度 第2回 能力開発セミナー』を開催

アルトナーでは、次代のエンジニアを目指す学生と社員を対象に、7月21日(土)、講師に人工知能・機械学習の研究者である濱上知樹氏と、世界初の燃料電池自動車の開発責任者である藤本幸人氏を招いて「能力開発セミナー」を開催しました。本会場である東京と、大阪、名古屋、宇都宮の各会場をWeb中継でつなぎ、総勢300名を超える学生と社員が聴講。それぞれの講演後には活発な質疑応答も行われ、有意義な時間となりました。

人工知能・機械学習の基礎知識、アルゴリズムとその応用

昨今、テレビや新聞で見聞しない日はないほどの盛り上がりを見せている人工知能・機械学習。AI技術が搭載された自動車や家電の他にも、その進歩は社会の仕組みや働き方にも大きな影響を与えつつあると言われています。最初の講演では、人工知能・機械学習の第一人者である濱上教授に、AIが実社会でどう生かされているか、これからエンジニアが仕事の中でどう使っていけばいいか、応用のヒントをお話しいただきました。


講師:横浜国立大学大学院工学研究院 教授 濱上知樹氏
プロフィール
千葉大学大学院自然科学研究科 博士課程修了後、同大学助手を経て、横浜国立大学大学院工学研究院に着任。助教授を経て、教授に就任。専門分野は、機械学習、知的医療支援、知的社会システムの研究。IEEE、電気学会、情報処理学会、計測制御自動学会、ロボット学会等、多数の学会にて積極的に活動。

AIは魔法ではない。
どう使われていくのか説明が必要。

人工知能の歴史は60数年に過ぎません。よちよち歩きの段階だと濱上教授は語ります。

「人工知能の歩みは1960年代の第1次ブーム、1980年代の第2次ブーム、そして2005年以降現在に至る第3次ブームに大別されます。ここ10年来は1年単位で次々と新しい技術が出てきており、飛躍的進化を遂げています。あらゆる技術は、『黎明期』、『過度な期待』、『幻滅期』、『啓発活動期』、『生産性の安定期』という5つのフェーズを経て実用化に至りますが、人工知能の技術は、ここ数年、ずっと『過度な期待』の状態にあり、昨今ブームの深層学習(ディープラーニング)がそのことを象徴しています。

研究者としてはうれしい反面、人工知能に過度な期待を持っていただきたくないという思いもあります。AIは実際に活用できますが、魔法ではありません。AIがいかに信頼できて、世の中でどのように使われていくのかをしっかりと説明していく必要があると考えています。」

AI基礎研究の出口はふたつ。
それは医療関係と社会インフラ。

大学で人工知能の基礎研究を行うと共に、濱上教授は30年近く企業での研究を通して「社会実装」に取り組まれています。基礎研究を実際の社会でどう応用するのか、講演は佳境を迎えます。

「基礎研究の出口として、2つ考えています。1つめが医療関係です。ライフサイエンスで人工知能を使おうという機運が非常に高まっており、救命救急で使う人工知能、重症度を判断する仕組みに人工知能を使う研究、がん治療の重粒子線の位置決め制御に人工知能を使う研究、生殖医療に人工知能を使う研究などが進行中です。そして、2つめが社会システムにおける活用です。

日本は今、社会のインフラが老朽化していて、その維持管理に莫大なコストがかかっています。少子高齢化で専門技術者の人手も不足しています。そこで、異常検知やメンテナンス、予兆感知などに人工知能を活用して遠隔操作する取り組みを進めています。」

いよいよ本格化する社会へのAIの導入。その鍵はエンジニアリングにあると、濱上教授はさらに続けます。

「人工知能の技術がいくら進歩しても、社会実装するためのエンジニアリングがなければ、絵に描いた餅です。技術とエンジニアリングは別物ですから。どう社会実装するのかという仕組みを踏まえながら人工知能を使っていくことを、私は『知能エンジニアリング』と名付けています。従来のシステムインテグレーションだけでなく、『インテリジェント・システムインテグレーション』という分野を築く必要があると考えています。」

AIは人の仕事を奪わない。
人はもっと生産的、総合的なことができるはず。

それでは、社会実装のためのエンジニアリングを担うエンジニアたちは、AIとどう向き合っていけば良いのでしょうか。濱上教授は会場の皆に向けて明快に語りかけます。

「AIはもはや人工知能の研究者や技術者だけのものではありません。WordやExcel、PowerPointと同じように、誰もが使えるツールになっていくと思います。どんな分野、どんな技術領域でもAIは必要になってきます。AI技術の進歩と同時に、社会を実際に動かしている管理者層の人たちを筆頭に、人々の意識が大きく変わったことが、その要因だと考えられます。若い皆さんがこれからエンジニアのリーダーになっていくことを考えると、さらにAIに対する信頼、コモディティ化は進むでしょう。

今後重要なキーワードをふたつ挙げておきます。ひとつはRPA(Robotic Process Automation)。機械的なプロセスを全てAIに置き換えていくこと。これによって人の仕事が奪われるとよく言われますが、決してそうではありません。人はもっと生産的で総合的なことができるはずです。そして、もうひとつがXAI(Explainable AI)。AIはブラックボックスであってはいけない。なぜこれが必要なのか、なぜそうなったのかを、説明するところまでがAIの責任だと考えます。AIを使って仕事、ではなく、AIと一緒に仕事をする時代へ。それはもう始まっています。」

今後もアルトナーでは、力強く羽ばたこうとする若いエンジニアに向けて、次代の鍵を握るテクノロジーに携わる方やトップエンジニアの方による、能力開発セミナーを実施してまいります。

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