自動車の設計開発 》かつてない大きな転換期を迎えている自動車産業。将来にわたり世界のイノベーションをリードしようと動き出しています。
自動車産業が迎える大きな転換期。
経済産業省「自動車新時代戦略会議」に見る、その方向性と未来。
日本を代表する数ある主要産業の中でも、高品質な製品や、使われているテクノロジーで世界をリードしてきた自動車産業。その自動車と周辺環境は今、かつてない大きな転換期を迎えています。
例えば、自動運転、運転支援などの技術の進化。これには、IoTや5Gによる通信、AIなどのテクノロジーが関係していますし、スマートグリッドにも自動車は登場します。このように非常に幅広い最新テクノロジーが関連し合うのが、自動車の設計開発です。それを踏まえて、アルトナーでは、ソフトウェア、電気・電子、機械の各分野でエンジニアを育て、自動車の設計開発の現場へ配属しています。
折しも、この自動車に起ころうとしている、大きな転換期については日本政府も注力しています。国にとって重要な自動車産業において、将来にわたって世界のイノベーションをリードし、環境問題や渋滞問題をも積極的に解決していくことを目指し、2018年(平成30年)に経済産業省は「自動車新時代戦略会議」を新たに設置しています。
その「第1回資料」に示されている自動車やモビリティの将来や方向性を、アルトナーが考えている開発という観点でピックアップしながら、自動車業界について、もう少し詳しく見ていきましょう。
(取材・記事執筆:アルトナー取材班)
大きく変わるクルマの未来。
自動車を中心とした「CASE」がカギです。
自動運転、運転支援、燃料電池、IoT…など、個々の技術に関しては、私達の知るところも多いのですが、日本が将来も自動車のイノベーションをリードしていくためには、これらをもう少し俯瞰から全体の構造変化を把握・理解した上で、様々な課題に取り組んでいく必要があります。経済産業省「自動車新時代戦略会議(第1回)」資料の冒頭にもありますが、自動車産業の構造変化として以下が主要な例として挙げられています。
●新たなプレイヤーとのイノベーション競争
●ハードからソフトへの付加価値シフト
●利⽤段階ビジネスの拡⼤
●必要となる開発投資の⼤規模化
●新たな⼈材確保・育成の必要性
●部素材サプライヤーの経営⾰新の必要性 etc.
これら大きな構造変化が起こってきている背景。それは「CASE」というキーワードが示す自動車を取り巻く環境の変化です。これは「ツナガル・自動化・利活化・電動化」という、4つの変化を示す英単語の頭文字を組み合わせた造語です。
《Connectivity=ツナガル》
⾞のツナガル化、 IoT社会との連携深化
《Autonomous=自動化》
⾃動運転社会の到来
《Shared&Service=利活化》
⾞の利⽤シフト、サービスとしての⾞
《Electric=電動化》
⾞の動⼒源の 電動化
これらから、将来の自動車産業には、今までとは異なる新たなテクノロジーやリソースが求められていることが見えてきます。それが急務とされている「自動車産業の構造変化」なのです。
進む自動車の「電動化」に寄せる大きな期待とは。
「CASE」における「E=電動化」を推し進める主要な技術は、1つには「電池」、2つ目が「パワートレイン」です。日本がリードしてきた自動車の電動化は世界的に拡大・加速していますが、これらの技術革新が進めば、将来的にはガソリン車よりもコストパフォーマンスが高く、環境負荷も格段に少なくなる自動車社会がやって来ることが容易に想像できます。
自動車の設計開発という視点では、特にIEA(国際エネルギー機関)が示しているパワートレイン別の長期見通し予測が、エンジニアを目指す皆さんの参考になりそうです。
2020年の乗用車販売台数におけるパワートレインの内訳では、EV(電気自動車)=5%、PHV(プラグインハイブリッド自動車)=4%、HV(ハイブリッド自動車)=6%となっており、合わせると電動車=15%の普及ですが、これが2040年になるとFCV(燃料電池自動車)=1%、EV=15%、PHV=20%、HV=15%、合わせると実に約半数の51%もの自動車が電動化されているという予測になっているのです。
この時点でもエンジン搭載車は84%と、少なくなっては行くものの、まだまだ一定水準以上の需要は保っている点にも注目できそうです。
自動車のみならず、都市を、街を変えていく。
自動運転技術の進歩は、革新的インパクトです。
「CASE」での「C=Connectivity」、「A=Autonomous」、「S=Shared&Service」が複雑に絡み合う、自動運転、先進安全自動車(ASV)の分野は、将来的に街の構造や、人々の生活、社会を変えていきます。ビッグデータやAIを使った高度な自動運転技術は、都市部では渋滞や事故の問題を解決していくでしょうし、郊外や地方ではエリアを限定して自動運転が行われる「レベル4」のバスやタクシーなども運行され、人口が少ない地域の重要な移動手段になったり、街のモビリティを最適化することに寄与するでしょう。また、自動車のシェアリングなども普及し、それに合わせて都市や街の構造までが変わって行くのです。
このことからも、自動車を構成・必要とされる技術が、部品の電子化比率の高まりはもちろんのこと、自動運転、先進安全自動車(ASV)などの制御ソフトウェア、ネットワークやAIを駆使した複雑なプログラムなどが急激に必要とされてきています。
自動車の設計開発を行うエンジニアを目指すにあたっては、このように、自動車とその周辺環境に起こっている、現在進行形の大きな変化について、しっかり把握・考察しておくことが大切です。
ソフトウェア
カーナビゲーションシステム、
ドライブレコーダーの
制御ソフト開発
(電動パワーステアリング)の
ソフト設計及び開発
HILSプラントモデル開発
電気・電子
(車両全体の配線、配線経路、
電源BOX、充電回路)の設計
機械
(ボデー、シャシ、エンジン、
ミッション、内装、
外装、構造解析等)
(環境試験、ノイズ試験、
耐久試験等)
ソフトウェア設計及びシステムテスト
(交通情報通信、車々間通信等)の
研究開発
自動車周辺監視システムの先行開発
(一定速度で車が自動的に走行する機能)
のソフト設計・評価
(自動ブレーキ、 アクセル制御等)の開発
(ステアリング補助等)の開発
テストした結果を受けて、エンジンの仕様が決まっていくレーシングカーは、省エネを目指しており、軽い素材開発が進めば、自家用車の省エネにもつながる。
部品の形状や材料を選択し実際にモデルを作り、構造解析し、図面を作成。