化学の知識を駆使して、全固体電池の開発に挑み続けています。

ハイバリューグループ
機械 S.M.
工学部 応用理化学系学科
2019年 新卒入社 30代
〈役職・年齢・業務内容等は取材時のものとなります。〉
「この世にないものを作り続ける」―Sさんが掲げる夢は、単なる技術的な挑戦にとどまりません。社会をより良くするために、まだ世の中に存在しない革新的な技術を生み出し続けることです。今回は、全固体電池の開発という次世代エネルギー分野の最前線で挑戦を続けるSさんに、研究内容、やりがい、今後の目標についてお話を伺いました。
(取材・記事執筆:アルトナー取材班)
日本人のノーベル賞受賞に感銘を受けたことが決め手となり、エンジニアを目指しました。

小学生時代から理科が大好きだったSさん。その中でも特に印象に残っているのは、カエルの解剖実験です。実物を自分の目で確かめることで、好奇心と探求心が刺激されました。こうした体験により、「実際に手を動かして検証する」ことの楽しさを知ったといいます。
2000年代前半、日本人科学者が次々とノーベル賞を受賞した出来事は、Sさんの化学への興味をさらに深めました。特に感銘を受けたのは、iPS細胞の研究における独自のアプローチ方法です。従来の方法では因子を1つずつ試していたところを、逆に全ての因子をまとめて加え、その後1つずつ取り除いて研究していくという逆転の発想に驚いたというSさん。「どれが必要ないか」を調べることで「これが絶対に必要だ」と導き出すこの手法に、机上の理論だけではなく、実際に手を動かしてモノを作るエンジニアと近しいものを感じたといいます。
企業との共同研究を通じて、立場の異なる人々と協力しながらモノを作り出す楽しさを実感しました。

Sさんが本格的にエンジニアを目指すきっかけとなったのは、大学院時代に経験した企業との共同研究でした。立場の異なる人々と協力しながら新しいものを作り出す楽しさを実感したといいます。研究室に残る道も考えましたが、世の中をより便利にするという夢を実現するためには、生活に密接に関わるものを作り出すことが最適だと考え、エンジニアの道を選びました。
Sさんが学んだ有機化学は、エネルギー・食品・医薬・美容など様々な産業に応用可能です。アルトナーに入社し、アウトソーシングという働き方を選ぶことで、1つの分野に限らず、多様な分野で社会に貢献できる点は、Sさんにとって大きな魅力でした。
今後は、アルトナーの化学系人財の先駆者となり、その基盤を築いていきたいと語るSさん。目標は、化学系エンジニアを求めるお客様をさらに増やすことです。そのための第一歩として、週に一度は論文を読み、月に一度の頻度で同じアルトナーの化学系エンジニアと論文内容を発表し合う場を設けています。お客様に求められる化学系エンジニア集団の基盤を作るため、日々コツコツと努力を積み重ねています。
学生時代に学んだ化学の知識が日々の業務に直接活かされています。

Sさんは学生時代、有機ゲルマニウム化合物の新規合成に取り組んでいました。化学は物質を扱うすべての分野の基盤であり、現在携わっている全固体電池の研究にもその知識が大いに役立っています。
具体的には、材料選定や設計の過程では化学構造や化学物理物性の知識が、電極の混錬や塗工では、流体や粉体の特性に関する知識が有用です。また、評価解析の際には、研究で使用したSEMやMS、NMRなどの分析機器を駆使しています。これらの知識や機器は、化学を専攻した学生であれば触れることも多く、蓄積された知識を実務に生かすことができるとSさんは考えます。
さらに、最近では、「カーボンニュートラル」の知識や技術を持つエンジニアの需要が高く、学生時代にCO2の利用や還元、発生を抑える機構や反応といった「カーボンニュートラル」の根本に関わる分野を学ぶことは、化学専攻の学生の活躍の場を広げる可能性があるとSさんは考えています。また、次世代バッテリー開発においては材料化学や有機無機化学、電気化学や分析化学などの基礎的な学問も重宝されています。
現在の目標は、全固体電池の車載化です。

Sさんが研究開発を行っている全固体電池は、次世代のエネルギー技術として大きな期待を集めています。その最大のメリットは、安全性と耐久性の向上です。従来のリチウムイオン電池は液体電解質を使用しているため発火リスクが存在しますが、全固体電池は燃えない固体電解質を使用しており、安全性が大幅に向上します。さらに、温度変化に強いという特長を持ち、極寒の地域や高温になる季節でも安全に使用できるという利点があります。
全固体電池は、将来的に車載電池としての利用が期待されており、自動車業界での技術革新が進むと考えられています。Sさんの課題は、現行技術で製造された全固体電池を車載可能なものにすることであり、日々、その実現に向けた技術開発を進めています。
全固体電池の製造においては、湿度が厳しく管理されたドライルーム内で作業を行います。人体から発生する水分を極力抑える特殊な作業服を着用するため、極低湿度の環境下での作業は大変です。
しかし、優れた電池特性を得ることができた際の達成感は非常に大きいといいます。その成果がSさんの原動力となり、やりがいにつながっています。
新入社員研修で得たスキルを、実際の仕事で活かしています。

Sさんは、アルトナーの新入社員研修で学んだExcel VBAの操作方法が実務のデータ管理に非常に役立っていると語ります。アルトナーの研修では、実務に即したスキルを学ぶことができ、化学畑出身で実際にソフトを触ったことがない人でも、基礎からしっかりと教わることができるため、あまり心配する必要はないと感じているそうです。
新入社員のころは、ルーティンワークをしっかりと身に付けることを意識していたというSさん。決められたタスクを確実にこなすことで、職場に早く馴染めたと振り返ります。現在はチームをまとめる立場として、作業が円滑に進むよう実験の進行状況やチームメンバーの作業内容を細かく確認し、PDCAサイクルをスムーズに回すことを心掛けています。万が一、エラーが発生した際に迅速に対応するためにも、エンジニア同士の密なコミュニケーションは重要です。
自分らしく働ける環境が整っていて、充実した毎日を送っています。
Sさんは現在の配属先について、業務後の時間を確保しやすく、働くことが好きな人でも、プライベートを大事にしたい人でも、その両者が働きやすい環境だと語ります。もし自身で研究したいことがあれば、配属先の上司と相談のうえ成果を追求することもできる自由度もあり、フレキシブルに働ける環境だと満足しています。

プライベートでは、最近車を購入したこともあり、ドライブや旅行で気分転換をしています。

エンジニアを目指す化学系学生へのメッセージ

「化学の知識を活かして働きたい」「研究開発に興味がある」という学生の方には、論文を読む力を身に付けることをおすすめします。研究では、論文で発表された研究結果を自分の研究に応用することが非常に多く、論文を誤って解釈すると思うような結果が得られないことがよくあるためです。
私の夢は、エンジニアとしてこの世にないものを作り続けることです。常に自分や周りの人たちが「あったらいいな」「こうあればいいな」と思うものをキャッチし、まだ世界にないものを作り続けていきたいと考えています。
化学系の知識や技術は、エンジニアとしての仕事で非常に役立ちます。ぜひ、一緒にこの世にないものを作り出していきましょう。