社員を一人にしない─アルトナーのメンター制度が生み出す「立ち止まる時間」

2016年にスタートし、今年で9年目を迎えるアルトナーのメンター制度。社員を一人にしない──その想いを形にした制度です。今回は、制度の立ち上げから運営に携わり、現在も中心となって取り組んでいる人事グループのSさんに、メンター制度導入の背景や運用の工夫、そして今後の展望についてお話をうかがいました。
(取材・記事執筆:アルトナー取材班)

Profile

管理本部
人事グループ
リーダー S.K.

50代
〈役職・年齢・業務内容等は取材時のものとなります。〉

女性活躍推進法の施行をきっかけに、メンター制度をスタートさせました。

アルトナーのメンター制度が開始されたのは2016年11月です。当時は女性活躍推進法の施行により、企業には数値目標の設定や研修の実施といった取り組みが求められていました。その流れを捉え、アルトナーの人事グループでは女性の活躍をさらに推進するための施策としてメンター制度の導入が検討されました。当時、社内に占める女性の割合は現在よりも少なく、キャリア形成を後押しする仕組みが必要とされていたのです。加えて、配属先や小規模な拠点では、EC長や営業担当が多忙を極める状況が続き、若手社員が悩みを打ち明けにくい環境も見受けられました。「社員が孤立することなく、安心して相談できる仕組みを整備する必要がある──」そうした問題意識もあり、厚生労働省が推奨していたメンター制度に着目しました。まずは5組のペアによる小規模な取り組みとして始まったのがアルトナーにおけるメンター制度の第一歩です。

制度の根底にある趣旨は「社員を孤立させないこと」です。アルトナーが掲げるサステナビリティ基本方針には「従業員がやりがいを持って働けるよう職場環境を整備する」という理念が明記されています。メンター制度は、まさにこの理念を人財育成やキャリア支援の仕組みとして具体化したものです。社員一人一人が安心して成長できる環境を整えることは、アルトナーの企業文化そのものと深く結びついています。

悩みが芽生える時期に手を差し伸べられる体制づくりが大切です。

アルトナーのメンター制度の対象は社歴2〜3年目の社員です。入社直後の1年間は与えられた業務を習得で精一杯ですが、2年目以降になると仕事の流れに慣れる一方で、「今後のキャリアをどう描くべきか」「このままのキャリアで良いのか」といった迷いが生じやすくなるとSさんはいいます。

人事グループでは、この時期を「キャリアの分岐点」と捉え、経験豊富な先輩社員をメンターとして配置し、安心して本音を語ることのできる場を設けています。メンターはおおむね社歴10年前後の社員が担い、年齢層としては30〜40代が中心です。メンターとメンティは別部署になるようにしており、若手にとっては近すぎず、率直な対話を行いやすい距離感を意識しています。

“立ち止まる”時間を強制的につくることに意味があります。

アルトナーのメンター制度では、半年間にわたり月1回・1時間の面談を実施しています。面談は事前に提出されたテーマをもとに進められ、メンターの助言を踏まえてメンティが次の1か月間の取り組みをまとめます。

この制度の最大の目的は、社員が「多忙な日常の中でも立ち止まり、自分の将来を見つめ直す時間を持つこと」です。業務に追われていると長期的なキャリアを考える余裕は生まれにくいものですが、定期的にメンターと向き合う場を設けることで、メンティが自身のキャリアを俯瞰し、次のステップを考えるきっかけとなっています。

面談時の相談テーマは自由ですが、よく取り上げられるのはキャリアの方向性や日常業務の悩みです。「今の経験をどう次につなげればよいか」といった相談や、「周囲に頼れず業務を抱え込んでしまう」と打ち明けるケースもあります。こうした対話を通じて、メンティは自分の課題を整理しメンターとともに解決の糸口を見つけていきます。

女性社員がメンターを務めるケースでは、結婚や出産といったライフイベントを見据えたキャリア相談に対応できる点も大きな魅力です。ライフステージに伴う不安を共有し経験に基づいたアドバイスを得られることは、女性社員のキャリア形成を力強く後押ししています。

さらに、アルトナーではメンター制度をより充実させるため「メンタリング研修」を実施しています。eラーニング教材を活用して、「支援はしても指示はしない」といったメンターの基本的な姿勢を学べるほか、初回面談でのリラックスできる雰囲気づくりなど実践的なポイントも取り上げています。初めてメンターを務める社員でも安心して役割に臨める環境が整っています。

今後は、スタートから3か月目に「中間フォロー」を実施し状況を確認することも検討中であり、より実のある制度へと進化を続けています。

数字だけでは測れない手応えを感じています。

メンター制度を経験した社員からは「普段接点のない部署の人と話せて刺激になった」「会話を通じて気持ちが整理できた」といった声が寄せられています。特に小規模拠点に勤務する社員にとって、本社の社員と交流できることは大きな支えとなっており、「社内に仲間がいると実感できた」「自分の仕事が組織に貢献していると感じられた」との感想も挙がっています。数字には表れにくいですが、社員が安心感やつながりを得られることは制度の大きな意義といえます。

また、メリットはメンティだけにとどまりません。メンターを務めた社員からは「後輩の相談を受けることで、自らのキャリアを振り返る契機になった」との声もあります。メンター制度は単なる支援の場ではなく、双方が学び合う場として機能しています。支えることで支えられる──その相互関係こそが、アルトナーのメンター制度を特徴づける価値の1つです。

描く理想は、自然に「支え合う文化」が広がることです。

2025年度現在、アルトナーのメンター制度は管理部門を中心に9組のペアで運用されています。初年度にはエンジニアも加えてスタートしましたが、当時はリモート環境が整っていなかったため継続が難しく、一時的に中断されました。現在ではオンライン環境が充実したこともあり、エンジニアへの再拡大も視野に入れています。

Sさんが描く理想は、制度がきっかけとなって社内で自然に「支え合う文化」が広がっていくことです。社員同士が日常的に「相談してみよう」「後輩の話を聞いてみよう」と思えるようになれば、メンター的な存在が各所に生まれます。制度はあくまで入口にすぎず、その先に広がる日常の中でのつながりこそが、アルトナーをより安心感のある会社へと成長させる基盤になると考えています。

人事グループ Sさんからのメッセージ

アルトナーのメンター制度はまだ発展途上ではありますが、社員から寄せられる感謝の声や多部署との交流による効果など、確かな手応えを感じています。
誰にでも、不安や迷いはあるものです。一人で抱え込まずに、誰かに話すだけで気持ちが軽くなることもあります。メンター制度は、そんな安心して話せる場をつくる取り組みです。これから入社してくださる方にも「アルトナーなら安心して働くことができる」と思っていただけるように、私たちはこれからも寄り添い続けたいと考えています。

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