AI活用が進む開発現場――エンジニアの仕事と役割はどう変わっている?

Profile
ハイバリューグループ
ソフトウェア エキスパート T.N.

理学部 数理情報科学科
2016年 新卒入社 30代
〈役職・年齢・業務内容等は取材時のものとなります。〉

ハイバリューグループ
ソフトウェア エキスパート補佐 W.S.

大学院 システムデザイン専攻
2021年 新卒入社 20代
〈役職・年齢・業務内容等は取材時のものとなります。〉

同じ配属先企業で、産業用ロボット向けビジョンシステムの開発に携わるTさんと、次世代ミラーレス一眼カメラの新機能開発に携わるWさん。異なる開発現場で、コードの実装や技術調査、設計書・資料の作成などにAIを活用しています。

AIの活用が進む開発現場では、業務の進め方やエンジニアの役割にどのような変化が生まれているのでしょうか。AIを使う上で意識していることや、これからのエンジニアに求められる力について、日々の業務でAIを活用する2人のエンジニアに語っていただきました。(取材・記事執筆:アルトナー取材班)

AI活用で変わる、エンジニアの業務と時間の使い方

──業務では、AIをどのように活用していますか。

T:お客様から許可されている範囲で、Claude、Microsoft Copilot、ChatGPTなどを用途に応じて使い分けています。コードの実装や設計、技術調査、デバッグにはClaudeを使い、Microsoft製品のドキュメントを扱う際にはCopilotを活用しています。
また、壁打ち相手としてもAIを使っています。担当するソフトウェアについて「この部分を改善したい」とAIに相談し、提示された複数の案を検証しながら、よりよい方法へと近づけていくイメージです。

W:私は、ClaudeやGitHub Copilotをコードの実装・修正、設計書の作成、説明資料の下書きなどに活用しています。特に、コードや資料の初期案を作る際に役立っています。

──AIを活用するようになり、仕事はどのように変わりましたか。

W:初期案を効率よく作成できるようになり、私の感覚では作業負担が半分以上軽減されました。手戻りも減り、レビューや技術的な検討に時間を充てられるようになっています。
現在携わっているオートフォーカス機能の開発では、性能向上に向けて検討できる施策のバリエーションを増やせることも、AIを活用するメリットだと感じています。

T:技術調査やサンプルコードの作成、実装方法の検討、ドキュメント作成などにかかる時間は、感覚として約70%削減されました。特に、コードの実装時間が大幅に短くなっています。
その分、設計や技術的な検討に、より多くの時間を充てられるようになりました。

AIから適切な答えを引き出し、見極めるための工夫

──AIを活用する際、どのような工夫をしていますか。

W:どこまでをAIに任せるのかを切り分け、目的や前提条件を明確に伝えることを意識しています。製品の条件や制約を加えることで、求めている内容に近い回答を得やすくなります。
現在の配属先では、効果的な質問方法やプロンプトの工夫を周囲のメンバーと共有しながら、実務での活用力を高めています。

T:私もWさん同様、前提条件を明確にし、正確に伝えることを大切にしています。また、複数の案を提示させて比較し、その中から有効だと考えられる方法を検討することも重要だと考えます。

──AIの回答を判断するために、どのような力が必要だと思いますか。

T:AIのアウトプットをそのまま受け入れず、正しさを見極める力が必要です。そのためには、業務や製品に関する専門知識に加え、エンジニアとしての基礎知識も欠かせません。
AIは、実在しないものについても、あたかも存在するかのように説明することがあります。私自身、回答の事実を確認したところ、実在しないものが含まれていたことがありました。
必要に応じて複数のAIに回答をレビューさせますが、最後は必ず自分で内容を確認し、検証やテストを行います。AIは、思考や実装を支える補助ツールとして活用しています。

W:Tさんがおっしゃるように、AIの回答が正しいかどうかを見極めるには、ベースとなる技術知識が必要だと感じています。どこまでをAIに任せるかを判断し、出てきた回答の妥当性を自分で評価することが大切です。

AI時代における、エンジニアの役割

──AIの活用が進む中で、エンジニアにはどのような力が求められると思いますか。

W:構想設計や仕様検討といった上流工程の重要性が、今後更に高まると感じています。
製品に搭載する機能についてAIに尋ねれば、一般的な案を得ることはできます。しかし、競合製品と差別化し、ユーザーに新しい価値を届ける機能を生み出すには、製品の特性やお客様のニーズを理解した上で、人が考え、判断する必要があります。
何をつくるのか、どのような価値を提供するのかを考えることが、AIを活用するエンジニアには一層求められると思います。

T:AIが普及するほど、エンジニアの役割は「実装する人」から「設計・判断・責任を担う人」へ移っていくと考えています。
コーディングは高い精度でAIが行えるようになっていますが、何をつくるべきかを決める要件定義や、システム全体の構造を考えるアーキテクチャ設計は、今もエンジニアの力が大きく求められる領域です。
私が携わる産業用ロボット向けビジョンシステムの開発でも、AIが示した方法を現場の条件に照らして検証し、採用するかどうかを最終的に判断するのはエンジニアです。

──ソフトウェアのコード生成が自動化・高速化される中で、ハードウェアの制約を理解することも重要になるのでしょうか。

W:組み込みソフトウェアの開発では、ハードウェアの制約を理解することが欠かせません。カメラに新しい機能を搭載する場合は、アルゴリズムの性能だけでなく、計算量なども考慮する必要があります。
高性能なアルゴリズムでも、カメラに搭載されたハードウェアで処理できなければ、製品には実装できません。現在の開発業務を通して、製品の制約に適したアルゴリズムを選べる力を高めています。

T:CPUやメモリ、通信遅延、リアルタイム性などの制約を理解した上で、設計・実装・評価を繰り返すことが大切です。
また、既存のシステムを見て、「なぜこの設計になっているのか」「どのような制約を回避しているのか」を考える習慣も、実践的な知識を身につけることにつながります。

AIを活用するエンジニアを目指す方へ

──最後に、これからエンジニアを目指す方へメッセージをお願いします。

T:まずは、AIが得意なことと、できないことを見極めた上で、実際に使ってみて欲しいと思います。
同時に、身近な製品がどのような技術で成り立っているのか、なぜ今その製品が求められているのかにも関心を持ってみてください。技術だけでなく、製品や社会のニーズにも目を向けることが、何をつくるべきかを考える力につながります。
アルトナーでは、自動車やロボティクスなど、ハードウェアと密接に関わる現場で設計や評価を経験できます。現場で試行錯誤を重ねることが、AIを活用する上で必要な判断力や問題解決力を磨くことにもつながると感じています。

W:エンジニアを目指す方には、コミュニケーションスキルも磨いて欲しいです。まずは自分で考え、その上でわからないことを周囲に聞き、知識を吸収していく姿勢が成長につながります。
AIについては、最初から詳しい必要はないと思います。実際に使いながら学び、自分の仕事にどのように生かせるかを考えることが大切です。
アルトナーでは、AIも活用しながら、様々な企業の現場で経験を積むことができます。それぞれの環境で周囲と協力しながら学び、技術を高めていって欲しいと思います。

TOP