設計工学・感性工学の研究者である加藤健郎氏を講師に招き、「能力開発セミナー」(6月6日)が開催されました。

アルトナーでは、6月6日、講師に設計工学・感性工学の研究者である慶應義塾大学 理工学部 機械工学科 教授の加藤健郎氏を招いて「能力開発セミナー」を開催しました。今回のテーマは「AIと設計技術者」。AI技術の進化により、様々な分野でAIとどう向き合うかが問われるなか、AIと設計技術者の関係について考える機会となりました。
(取材・記事執筆:アルトナー取材班)

講師:慶應義塾大学 理工学部 機械工学科 教授 
加藤健郎氏

Profile

慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻 博士課程修了。東芝エレベータ株式会社開発部にて機械設計・開発に携わった後、慶應義塾大学理工学部機械工学科 助教、東海大学工学部機械工学科 助教・講師、慶應義塾大学理工学部機械工学科 専任講師、准教授を経て、2026年より教授に就任。専門分野は、設計工学、感性工学、人間工学、デザイン科学。IASDR理事、日本設計工学会理事、日本デザイン学会理事、日本感性工学会理事を務めるほか、日本機械学会、Design Society等にて活動。

「AIと設計技術者」をテーマに、3つの視点から講義を実施

当日は、「モノづくりの変遷」「設計(デザイン)行為の特徴」「設計者(デザイナ)とAIの関係性」の3つのテーマに沿って講義が行われました。

加藤氏は、機械設計の実務経験と設計・デザイン研究の知見をもとに、モノづくりや設計の考え方がどのように変化してきたのかを紹介。そのうえで、AIが設計者の発想や検討をどのようにサポートし得るのか、また人が担う役割はどこにあるのかを、研究事例を交えながら説明しました。

モノづくりの変遷――設計者に求められる視点の広がり

かつてのモノづくりでは、機能や性能、使いやすさを高めることが重視されてきました。しかし近年は、「便利である」「高機能である」といった製品そのものの価値だけではなく、その製品を使うことで得られる体験や感情にも関心が広がっていると加藤氏は語ります。

こうした変化を受けて、設計者が向き合う対象は製品そのものにとどまらず、製品を使う人、その人が置かれている環境、そこから生まれる体験まで含めて考えることが、モノづくりの価値を高めることにつながります。

設計(デザイン)行為の特徴――発想・分析・評価を繰り返す設計プロセス

加藤氏は、設計を「結果から原因を導く」行為として説明します。目的や目標を出発点にそれを満たす方法や手段を見つけていくため、設計は論理的にも難しい作業だといいます。

そのうえで、設計のプロセスについて「発想と分析と評価」という観点から紹介。設計では、アイデアを出すだけでなく、その内容を分析し、評価しながら検討を進めていくことが説明されました。

また加藤氏は、設計者が自身の専門分野に加えて、人文社会科学や心理学などにも目を向けることの大切さに触れました。自身の専門は仕事を通じて深まっていく一方で、「専門分野以外のところ」を学ぶ意識を持つことも大切だと強調しました。

設計者(デザイナ)とAIの関係性――AIが得意なこと、人が担うべきこと

加藤氏は、工学設計者の仕事はAIにそのまま置き換えられるというよりも、AIによって人の能力が支援・拡張される領域として捉えられるのではないか、と説明しました。続けて、「ビッグデータの分析はAIが得意とするところではあるものの、発想も意外と得意なのではないか」と問いかけました。講義では、AIによってキーワードを発想させ、ユーザーがそれを評価し、その評価に基づいてAIが分析する研究事例も紹介されました。

その一方で、加藤氏は、現時点では「最終的な評価」において人の役割が大きいと説明しました。AIが提示した案が正しいのか、自分の求めるものに合っているのか。そうした点を設計者自身が判断することで、初めてAIを活用できると説明しました。また、フィジカルAIのように、AIが扱う情報の幅が広がっていけば、設計における評価のあり方も変わっていく可能性があることにも触れました。

また加藤氏は、現時点では人の方が創造性の面で強い可能性があることも示しました。身近な製品や生物の画像を手がかりにアイデアを考えることで、発想や脳活動にどのような違いが生まれるかを調べた結果、概念距離が遠い刺激を与えた方が創造性の評価が高くなる傾向があると説明しました。AIは多くの情報を扱うことができる一方、人の記憶には、においや感覚、これまでの体験なども結びついており、そうした記憶が創造性に影響している可能性があると説明しました。

「プラスアルファ」の学びが、これからのエンジニアの価値になる

加藤氏は講義の最後に、自分の専門性を深めることの重要性に触れたうえで、今取り組んでいる仕事に加えて、プラスアルファで少し違う分野にも目を向けてみることの大切さを語りました。「今、ご自身が取り組んでいる仕事のプラスアルファとして、少し違う分野を見てみると面白いと思います。そこで得られる気づきが『ものを見る視点』を変え、皆さんの業務にもきっと役立つはずです」

今回のセミナーは、AIと設計者の関係を通じて、これからのエンジニアに求められる学びの姿勢を考える機会となりました。

今後も、アルトナーは時代の変化を見据えながら、エンジニア一人一人が学び続け、成長できる環境づくりに取り組んでまいります。

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